すきな人に会った

ロンジュンに会った。ライブで「見」たことはあったけど、今回、初めて「会っ」た。ロンジュンは、周りの人間とは一線を画すオーラの持ち主だった。昨日切ったのだろう、さっぱりと切り揃えられた短めの髪の毛は、真っ黒で、すこし傷みが見えた。色を抜いてブルーにした後に黒染めをしたからだと思う。みんなが口を揃えて「かわいい」と言う顔の造形は、思っていたよりもかわいさは無く、すべてのパーツがクッキリ、ハッキリしていた。眉間から鼻の先まで真っ直ぐに筋が通って骨張った高い鼻、大きくはないけど小さくもないほどよい大きさの特徴的な目(薄い瞼が申し訳程度に重なっている奥二重だった)、薄くて小ぶりな唇が、なめらかで細い輪郭のうえに絶妙なバランスで並んでいた。特に目が印象的で、5秒ほどしか目が合わなかったにも関わらず、今も目が合ったあの瞬間を鮮明に頭に思い浮かべることができる。おそらく彼の目は瞳がすこし奥に引っ込んでいて、光が入りにくいのであろう。照明の加減もあるとは思うが、いつも見ていたキラキラな瞳とは違い、真っ黒で、ブラックホールのように吸い込まれそうな瞳だった。いつも見ている照明に照らされたキラキラな瞳もすきだけど、今日の瞳はもっとすきだな、と思った。早い話、ロンジュンは美人だ。とっても美人だ。ステージ用のメイクはもっと派手なのだろうが、今回はリリイベだったため、ナチュラルなメイクが施されており、素材の良さが際立っていた。棘や鋭利な部分が極限まで削ぎ落とされ、時間をかけてまんまるに磨き上げたかのような印象。かといって地味なわけではなく、そのナチュラルなメイクがロンジュンの持つ素の華やかさを際立たせていたと思う。また、目の前にある端正な顔から発せられた声も、言葉にできないほど素晴らしいものであった。わたしの鼓膜に直接届いたロンジュンの声は想像通りとってもハスキーで、それでいて、いつもよりちょっとだけトーンが低く、しゃがれていた。5秒間だけだったとしても、あの肉声でわたしの鼓膜が震わされたのだと思うと、感動で胸がいっぱいになる。それくらいロンジュンの声は特別にかっこいい。彼の声が大好きだ。因みにわたしは瞳に吸い込まれそうになり、言おうと思っていたことがなにも言えず、上品な微笑みを浮かべありがとうございまーすとカードを渡してくれるロンジュンに対して伝えるべきことだけをとりあえず伝え、逃げるようにブースを出てきた。とても情けない話である。しかし、今後あの距離でロンジュンを見ることができる機会はきっとないであろう。もし今度会う機会があれば、次はぜったいに「あなたの声はわたしの遥かなる海です」と伝えよう、そう静かに決意した。